別表第八・第十と別表第十二、実務で一番迷う判断ポイント

別表解説

別表第八・第十と別表第十二、実務で一番迷う判断ポイント

PSE対応の相談を受けていると、「別表はどれを選べばいいですか?」という質問を本当によく受けます。制度上の違いは調べればすぐに分かりますが、実際の届出・試験の現場で迷うのは、むしろ「自分の製品にはどちらが適しているのか」という判断そのものです。

別表第八・第十と別表第十二の基本的な違いについては、既存記事で解説していますので、ここでは実務歴15年の中で繰り返し直面してきた「判断に迷う場面」に絞って整理します。

基本のおさらい:何が違うのか

別表第八・第十は日本国内の技術基準に基づく規格、別表第十二は国際電気標準会議(IEC)の規格をベースにした基準です。どちらで試験・適合確認を行っても法律上は問題ありませんが、製品の設計思想によって適合しやすさが変わってきます。

実務で一番迷うポイント

1. 中国製品は別表第十二が有利なケースが多い

中国製品の多くはIEC規格をベースに設計されているため、別表第十二を第一候補として検討すると、不適合項目が出にくい傾向があります。別表第八・第十を前提に試験を進めると、設計段階では想定していなかった項目で引っかかり、追加対応が必要になるケースを何度も見てきました。

ただし「中国製品だから必ず別表第十二」と機械的に決めつけるのは危険です。製品によっては国内基準の方が適合しやすい場合もあるため、最終的には試験機関への確認が欠かせません。

2. 試験機関側の提示をそのまま受け入れない

試験規格は試験機関から提示されることも多いですが、本来は事業者側から「この規格で問題ないか」を確認・提示するのが正しい進め方です。試験機関に任せきりにしてしまうと、事業者側の意図と異なる規格で試験が進んでしまい、後になって「なぜこの規格を選んだのか」を説明できなくなる場面があります。

3. 判断に迷った場合の相談先

別表の選択に確信が持てない場合は、METI(経済産業省)またはJET(一般財団法人電気安全環境研究所)の事前試験相談サービスを活用するのが安全です。自己判断だけで進めると、試験後に規格の選定ミスが発覚し、再試験が必要になるリスクがあります。

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実際にあった判断ミスの事例

過去の対応事例の中から、規格選定でつまずいたケースを2つ紹介します。

事例1:別表第十二で進めたが、追加試験が必要になったケース

中国製の直流電源装置を輸入する事業者が、「中国製だから」という理由だけで別表第十二を選択して試験を進めたところ、一部の耐電圧試験項目で国内基準との差異が発覚し、追加試験が必要になりました。製品自体はIEC規格に適合していたものの、日本市場向けに変更されていた仕様の一部が反映されておらず、規格選定の前提となる製品情報の確認が不十分だったことが原因です。

事例2:試験機関の提示をそのまま受け入れて手戻りが発生したケース

試験機関から「この製品なら別表第八・第十で問題ない」と提示され、そのまま試験を依頼した事業者のケースです。試験自体は合格しましたが、後になって適合同等証明書の発行要件が想定と異なり、追加書類の準備に時間がかかりました。事業者側が最初に規格選定の意図を確認していれば防げた手戻りです。

どちらのケースも、規格そのものの知識不足というより、「確認すべきタイミングで確認しなかった」ことが根本的な原因になっています。

規格選定を誤った場合のコスト・期間への影響

規格選定を誤った場合、想定されるロスは主に次の3つです。

  • 再試験費用:試験項目の追加・再試験が必要になった場合、数万円〜数十万円の追加費用が発生することがあります
  • 納期の遅延:再試験には通常1〜2週間、場合によっては1ヶ月以上の追加期間がかかります
  • 販売計画への影響:想定していた販売開始時期に間に合わなくなり、仕入れ・在庫計画全体に影響が及ぶことがあります

特に販売開始の直前になって規格の不備が発覚すると、スケジュールの立て直しが難しくなります。試験開始前の規格選定の段階で慎重に確認することが、結果的に最もコストを抑える方法です。

別表第八・第十が有利なケースもある

ここまで別表第十二を第一候補とする傾向について触れてきましたが、すべての製品に当てはまるわけではありません。

例えば、もともと日本市場向けに設計・製造されている製品や、過去に日本国内基準での試験実績が豊富な工場で製造されている製品の場合は、別表第八・第十の方がスムーズに適合するケースもあります。また、国内の販売代理店経由で仕入れる製品は、すでに国内基準ベースで設計されていることが多く、この場合は別表第十二に切り替える必要性自体が低いこともあります。

重要なのは「中国製品だから別表第十二」という単純な図式ではなく、製品の設計背景と過去の試験実績を確認したうえで規格を選ぶという姿勢です。

規格選定前に確認すべき3つのポイント

実務の中で、規格を選定する前に必ず確認するようにしている項目を3つ紹介します。

1. 製品の設計拠点と設計基準を確認する

製品がどこの拠点で、どの規格を前提に設計されたのかを工場に確認します。「中国製=IEC規格ベース」という前提は多くの場合正しいものの、OEM製造の場合は設計拠点と製造拠点が異なることがあり、この確認を省略すると規格選定を誤る原因になります。

2. 過去の試験実績を確認する

同じ製品ラインで過去に日本向けの試験実績があるかを確認します。実績がある場合は、その際に使用した規格を踏襲するのが最もリスクが低い選択です。実績がない場合は、工場側に「他国向けにどの規格で試験しているか」を確認し、そこから逆算して判断します。

3. 試験機関に規格選定の根拠を確認する

試験機関から規格を提示された場合は、「なぜその規格を選んだのか」を必ず確認します。単に「いつもこの規格で対応している」という理由だけの場合、製品固有の事情が考慮されていない可能性があるため、追加で製品情報を共有し、選定根拠を明確にしてもらうようにしています。

よくある質問

Q. 別表第十二で試験して、後から別表第八・第十に変更できますか?

A. 技術的には可能ですが、試験項目が異なるため、実質的には再試験に近い対応が必要になります。規格変更を前提にした計画は避け、最初の選定段階で慎重に判断することをおすすめします。

Q. 同じ製品でも仕入れ先が変わったら規格を見直すべきですか?

A. はい。仕入れ先(製造工場)が変われば設計仕様が異なる可能性があるため、規格選定は仕入れ先ごとに見直すのが安全です。「同じ製品名だから同じ規格で問題ない」と判断してしまうと、事例1のようなケースにつながります。

特定電気用品の場合はさらに慎重に

特定電気用品(◈PSEマーク)の場合、別表の選択は適合同等証明書の取得方法にも影響します。非特定電気用品に比べて後戻りのコストが大きいため、試験前の規格選定は特に慎重に進める必要があります。

まとめ:別表選択のチェックポイント

✅ 別表選択のチェックポイント

  • □ 製品がIEC規格ベースで設計されているか確認する
  • □ 中国製品でも別表第十二が最適とは限らない点に注意する
  • □ 試験規格は試験機関任せにせず、事業者側からも確認・提示する
  • □ 判断に迷う場合はMETIまたはJETの事前相談を活用する
  • □ 特定電気用品は後戻りのコストが大きいため特に慎重に

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