PSE対象製品を輸入・販売する事業者には、自主検査の実施と記録の作成・保存が義務付けられています。
「自主検査記録は何事もなければ見られることはまずない」という認識から、後回しにしたり、内容が不十分なまま保存しているケースが少なくありません。しかし何か問題が発生して行政の監査が入った場合、自主検査記録は必ず確認されます。
今回は、15年以上のPSE実務経験をもとに、自主検査記録の検査項目の特定方法・書き方・工場対応・管理方法の実務ポイントを解説します。
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1. PSE自主検査とは
PSE対象製品を製造・輸入する事業者は、電気用品安全法に基づき自主検査を実施し、その記録を作成・保存する義務があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 検査の主体 | 製造工場(輸入事業者の指示のもと実施) |
| 検査の方式 | 全数検査(1台ずつすべての製品) |
| 記録の保存期間 | 検査の日から3年間 |
| 記録の保存義務者 | 輸入事業者(日本側) |
自主検査は全数検査が原則です。サンプル検査や抜き取り検査ではありません。1台ずつすべての製品について検査を実施し、記録を残す必要があります。
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2. 自主検査記録に必要な記載事項
自主検査記録に記載すべき項目はMETI(経済産業省)によって指定されています。自社で様式を自由に作成できますが、必須記載事項が漏れていると義務を果たしたことにならないため注意が必要です。
主な必須記載事項:
- 電気用品の品名及び型式の区分
- 製造年月日(または輸入年月日)
- 検査年月日
- 検査した者の氏名
- 検査の方法
- 検査の結果
これらはMETIが指定している項目であり、様式の形式は問いません。Excelで作成しても、紙の様式でも問題ありません。ただし、後から改ざんされていないことが証明できる形で保存することが重要です。
3. 最重要:検査項目の特定ミスに注意
自主検査記録の作成で最も多いミスが検査項目の特定ミスです。
検査項目は製品ごとに異なる
PSEの自主検査項目は、技術基準の別表に定められています。しかし特定電気用品以外の電気用品(○PSE)の場合、検査項目は製品の電気用品名によって異なります。
実務上よくある誤りは、以下のようなケースです:
⚠️ コピペで検査項目を使い回すと「はまる」
別の製品の自主検査記録フォーマットをコピペして使い回すと、検査項目が異なるにもかかわらず気づかずに進めてしまうケースがあります。
検査項目の確認方法
正しい検査項目を特定するためには、技術基準の別表を自分で読んで確認することが基本です。
- 自社製品の電気用品名を確認する
- 電気用品の技術基準の解釈(別表)で該当品目の検査項目を確認する
- テストレポートの検査項目と照合する(参考として活用)
- 不明な場合はMETIまたは経済産業局に確認する
テストレポートの検査項目はあくまで参考です。テストレポートに記載されていない検査項目が自主検査では必要になる場合もあります。両方を確認することをおすすめします。
4. 自主検査記録は工場が作成する
自主検査は製造工場が実施し、記録を作成します。輸入事業者(日本側)はその記録を受け取り、3年間保存する義務があります。
日本向けが初めての工場には説明が必要
初めて取引する中国工場が日本向け製品の製造が初めての場合、自主検査記録の存在自体を知らないことがあります。
実務上、「自主検査記録とは何か」から説明しなければならないケースが実際にありました。以下の点を工場に説明・依頼する必要があります:
- 自主検査記録とは何か・なぜ必要か
- 記載すべき項目(METIが指定する必須記載事項)
- 全数検査の意味(サンプルではなくすべての製品)
- 検査項目の内容
- 記録の提出タイミング
初回取引時に工場とこれらの認識を合わせておくことで、後からの手戻りを防ぐことができます。
工場印があることが望ましい
自主検査記録には工場印(社印)があることが望ましいです。
法律上、工場印の押印は必須ではありません。しかし工場印がない記録は、行政の監査時に「偽造されたのではないか」と疑われる可能性があります。工場印があることで記録の信頼性が高まり、本物であることの証明になります。
工場に依頼する際は、「自主検査記録に工場印を押してほしい」と明示的に伝えてください。言わなければ押してもらえないことがほとんどです。
5. 自主検査記録の入手タイミング
自主検査記録は生産が終わった都度、入手することをおすすめします。
まとめて後から依頼すると、以下のリスクがあります:
- 工場の担当者が変わっていて記録が見つからない
- 工場が廃業・移転していて連絡が取れなくなる
- 記録が紛失・消去されている
- 後から作成した記録(バックデート)と疑われる可能性がある
⚠️ 監査時には必ず確認される
自主検査記録は「何事もなければ見られることはまずない」書類です。しかし、製品事故や市場での試買テストで問題が発生した場合、行政の監査が入り、自主検査記録は必ず確認されます。
その時点で記録が揃っていない・内容が不十分では、法律違反として処罰の対象になります。「問題が起きてから揃えればいい」では間に合いません。
6. 自主検査記録の保存方法
自主検査記録は検査の日から3年間の保存が義務です。
保存方法の実務上のポイント:
- 紙の原本を保存する:PDFスキャンのみでは不十分な場合がある
- 製品別・ロット別に整理する:監査時に素早く提出できる状態にしておく
- 3年間の保存期限を管理する:古い記録の廃棄タイミングを把握しておく
- バックアップを取る:紙の原本が紛失した場合に備えてPDFでも保存しておく
7. よくある質問
自主検査記録の様式はMETIから指定されている?
→ 様式の形式は自由ですが、記載すべき項目はMETIが指定しています。市販のテンプレートや自社で作成した様式でも、必須記載事項が揃っていれば問題ありません。
テストレポートがあれば自主検査記録は不要?
→ テストレポートと自主検査記録は別物です。テストレポートは試験機関が発行する書類、自主検査記録は工場が製品ごとに作成する書類です。両方が必要です。
工場が自主検査記録を作成してくれない場合は?
→ 輸入事業者として自主検査の実施・記録作成を工場に義務付けることが必要です。対応できない工場との取引はPSEコンプライアンス上のリスクになります。
複数の製品を同じフォーマットで管理してよい?
→ 検査項目が同じ製品であれば同じフォーマットを使用できます。ただし電気用品名が異なる場合は検査項目が変わるため、製品ごとに検査項目を確認してフォーマットを作成してください。
まとめ
- 自主検査記録の作成・保存は法律上の義務(保存期間3年)
- 自主検査は全数検査が原則
- 検査項目は製品の電気用品名によって異なる・コピペ流用は危険
- 検査項目は技術基準の別表を自分で読んで確認する
- 自主検査記録は工場が作成する・初取引の工場には説明が必要
- 工場印があることが望ましい・依頼しなければ押してもらえない
- 生産が終わった都度、入手する・まとめて後から依頼するのはリスク
- 監査時には必ず確認される・「問題が起きてから揃えればいい」は通用しない


