電気天火(ノンフライヤー)のPSE対応実務| 試験不適合の原因とSマーク取得の判断基準

実務ガイド

「電気天火」という名称はなじみが薄いかもしれませんが、近年人気が高まっているノンフライヤー(ノンフライエアフライヤー)は、PSEの電気用品名でいう「電気天火」に該当します。

中国製ノンフライヤーの輸入が増加している一方で、PSE対応の実務では見落としやすいポイントがいくつかあります。

今回は、私が実際にノンフライヤーのPSE申請・Sマーク取得を対応した経験をもとに、実務上の注意点を解説します。

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1. 電気天火とは?ノンフライヤーとの関係

電気用品安全法における「電気天火」とは、電熱を利用して食品を上方から加熱する調理器具を指します。

現在市場で広く販売されているノンフライヤー(エアフライヤー)は、熱風を循環させて食品を加熱する仕組みですが、PSEの電気用品名としては「電気天火」に分類されます。

輸入事業者がまず確認すべきことは、「自社製品がPSEの電気用品名のどれに該当するか」です。ノンフライヤーを輸入する場合は「電気天火」として届出・申請を進めることになります。

2. 電気天火のPSE対象範囲

電気天火には、フードミキサーのような消費電力の上限規定はありません。ただし、実務上は消費電力の規格値上限が日本の家電の上限である1500Wを超えないようにする必要があります。

これは法律上の規制ではなく、日本の一般家庭のコンセントがAC100V・最大15Aであることに由来します。消費電力が1500Wを超える製品は、一般家庭では安全に使用できないため、実質的に1500W以下に抑える必要があります。

中国製のノンフライヤーには1500Wを超える仕様の製品もあるため、仕入れ前に消費電力の仕様を必ず確認することが重要です。

3. 別表の選択:第八・第十を選んだ結果

私が対応した案件では、別表第八および第十(国内基準)で試験を実施しました。

しかし中国製のノンフライヤーであったため、試験で複数の不適合項目が発生しました。

不適合項目への対応は:

  • メーカーへの設計変更依頼
  • 部品の変更・追加
  • 再試験の実施

と、非常に手間と時間がかかりました。

電動工具の記事でも触れましたが、中国製品は国際規格(IEC)ベースで設計されているケースが多く、別表第十二(国際規格ベース)の方が不適合項目が出にくい傾向があります。電気天火についても同様で、中国製品を扱う場合は別表第十二を第一候補として検討することをおすすめします。

4. 試験で発生した不適合と対応方法

温度上昇試験でのNG

今回の案件では、温度上昇試験で不適合となりました。

原因は温度ヒューズの温度設定値でした。温度ヒューズとは、製品内部の温度が異常に上昇した際に回路を遮断する安全部品です。この設定値が試験の要求値に対して適切でなかったため、不適合となりました。

対応方法は温度ヒューズの温度設定値を変更することで、再試験の結果PASSとなりました。

温度ヒューズ選定の注意点

温度ヒューズは一見シンプルな部品ですが、メーカーによって精度の差が非常に大きいという特徴があります。

粗悪な温度ヒューズを使用すると:

  • 設定温度に達する前に切れてしまう
  • 製品不良・返品率の増加につながる
  • 市場でのクレーム・品質問題に発展する

PSEの試験をPASSした後でも、量産品で品質トラブルが発生するケースがあります。温度ヒューズは有名メーカーの製品を使用することを強くおすすめします。コスト削減を優先して安価な部品を使うと、後々の不良対応コストの方が高くつくことになります。

圧着端子の施工管理(工程監査での確認ポイント)

PSEでは要求されていませんが、実務上非常に重要な点として電源コードと内部配線の接続方法があります。

圧着端子を使用して接続する場合、以下の点が守られているか確認が必要です:

  • 専用の圧着工具を使用していること
  • 電線の径に合った圧着端子を使用していること
  • 圧着後に端子が緩んでいないこと

圧着が不適切な場合、接触不良が発生します。接触不良は電気抵抗の増大を引き起こし、発煙・発火事故に直結する非常に危険な状態になります。

PSEの試験では製品の電気的性能を確認しますが、個々の製品の組み立て品質まではチェックできません。量産品の品質を担保するためには、工程監査で圧着端子の施工状態を必ず確認することが重要です。

⚠️ 工程監査チェックポイント

  • 圧着工具は専用品を使用しているか
  • 電線径と圧着端子のサイズが一致しているか
  • 圧着後に端子を引っ張って緩みがないか確認しているか
  • 温度ヒューズは有名メーカーの製品を使用しているか
  • 温度ヒューズの設定温度が仕様書通りか確認しているか

5. Sマークを取得した理由

この案件ではPSEマークに加えてSマークも取得しました。

Sマークとは、PSE制度とは別の第三者認証制度です。PSEマークが法律上の義務であるのに対し、Sマークは任意の認証ですが、安全性の客観的証明として機能します。

今回Sマークを取得した理由は、BtoB向けの出荷があり、取引先から第三者認証の提示を求められたためです。

私の経験では、以下のような場合にSマーク取得を求められるケースが多いです:

  • 量販店・大手小売チェーンへの納品
  • OEM製品として大手ブランドに供給する場合
  • 企業向け(BtoB)の一括販売

※2026年現在では、Sマークを求める企業は非常に少なくなっています。

逆に、個人向けのECサイト販売のみであれば、Sマークを求められるケースは少ない印象です。

6. ノンフライヤー輸入で実務上注意すべきポイントまとめ

①仕入れ前に消費電力を確認する

1500Wを超える仕様の製品は日本市場での販売に適しません。仕様書・スペックシートで消費電力を必ず確認してから仕入れを決定してください。

②電気用品名は「電気天火」で届出する

「ノンフライヤー」という製品名で届出することはできません。PSEの電気用品名である「電気天火」として届出・申請を進める必要があります。

③中国製は別表第十二を検討する

前述のとおり、中国製品は国際規格ベースで設計されているケースが多く、別表第八・第十では不適合項目が出やすい傾向があります。試験機関に相談しながら別表の選択を決めることをおすすめします。

④温度ヒューズは有名メーカーを指定する

温度ヒューズの精度は製品品質に直結します。コスト削減を優先せず、有名メーカーの部品を使用するよう製造メーカーに指定することをおすすめします。

⑤工程監査で圧着端子の施工状態を確認する

PSEでは要求されていませんが、圧着端子の施工不良は発火事故に直結します。工程監査の際に必ず確認するようにしてください。

⑥販売先の要求によってSマークの必要性を判断する

BtoB販売や量販店への納品を予定している場合は、Sマーク取得を視野に入れて計画を立てることをおすすめします。Sマーク取得には追加の費用と時間がかかるため、早めに確認しておくと良いでしょう。

7. よくある質問

ノンフライヤーは特定電気用品(◈)?非特定(〇)?
→ 電気天火は特定電気用品以外の電気用品(〇PSEマーク)に該当します。

消費電力が1500Wを超える製品は販売できない?
→ 法律上の禁止ではありませんが、一般家庭のコンセントで安全に使用できないため、実質的に日本市場向けには適しません。

電気天火と電気オーブンの違いは?
→ 電気天火は上方から加熱する器具、電気オーブンは周囲から加熱する器具として区別されます。製品の加熱方式によって電気用品名が変わるため、試験機関に確認することをおすすめします。

Sマーク取得の費用はどれくらい?
→ 製品や試験機関によって異なりますが、PSE試験と合わせて実施すると費用を抑えられる場合があります。試験機関に見積もりを依頼してください。

温度ヒューズの設定温度はどう決める?
→ PSEの技術基準に定められた温度上昇の要求値をもとに、試験機関と相談しながら決定します。製品の通常使用時の最高温度も考慮する必要があります。

まとめ

  • ノンフライヤーはPSEの電気用品名「電気天火」に該当する
  • 消費電力の規格値上限は1500W以内に収める必要がある
  • 電気天火に消費電力の法的上限規定はないが、日本の家電上限1500Wが実務上の基準になる
  • 中国製は別表第十二での試験を第一候補として検討する
  • 温度上昇試験でのNGは温度ヒューズの設定値変更で対応できる
  • 温度ヒューズは有名メーカーの製品を使用する
  • 圧着端子の施工不良は発火事故に直結するため工程監査で必ず確認する
  • BtoB販売・量販店納品の場合はSマーク取得を早めに検討する

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